Tutte le proprietà del tofu, alimento d'eccellenza di ogni famiglia giapponese

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  右の掌の上で真っ白な豆腐の角が揺れた。左利きの私が恐るおそる包丁を入れるのにもどかしさをこらえながら母が言う。
 「心配せんでも手は切れんよ。包丁が手に触ったら止めたらいいんやから。」
絹のような滑らかさに由来する絹ごし豆腐は壊れやすく、掌の弾力を利用して切るのが一番。
 仕事が好きで料理をする時間も興味もなかった母は、料理の腕はイマイチだった。ところが包丁の使い方を合理的に伝授してくれたのは実はその母だった。
 リンゴの皮は包丁を持った手の親指を刃の前方に充て、そこに包丁を押すように剥く。
「指は切れんよ。指は皮の上、包丁は皮の下を通るんやもん。」
 

 掌に包丁が垂直に触れるや否や豆腐はあっけなく二つに開らき、体をくねらせると板飛び込みよろしく手のひらから後方伸び型で昆布出汁をはった土鍋の中に吸い込まれていった。壊れやすい物をこれまた柔らかい手で守って切る。その新しい常識に子供だった私は目をこすった。
  こうして温めた豆腐や豚の薄切りを鍋からすくいとり酢醤油にネギの千切りをのせてご飯の伴にする。さっぱりとして食欲をそそり、冬場の冷えた体を温めた。手軽に用意できるこの一品を母は飽きが来るまで毎晩こしらえた。


 豆腐は、大豆から得る豆乳を『にがり』と呼ばれる凝固剤で固めた加工品。大豆をすり潰した『呉汁』を煮るとこれを絞った豆乳を温め、海水から抽出した塩化マグネシウムつまり「にがり」を凝固剤に固めたものが豆腐。絹ごし豆腐のほかに少し硬めに作り、重しを載せて水を切った木綿豆腐がある。
 その作り方はチーズのそれに似ているが、塩は用いず、例外はあるものの一般的に『熟成させる』というコンセプトも見られない。大豆本来のかすかな甘みと食感を楽しむ食材で新鮮さが命。子供の一つ覚えのような母の豆腐料理を冗談半分に愚痴りはしたが、本当は飽きなどほとんど感じていなかった。大豆独特の優しい味わい、胃に優しく、私にとって何とも心地よい食材だった。

 実際、優れた栄養成分(レシチン、コリン、サポニン、イソフラボン、オリゴ酸、カルシウムなど)を含み、血圧、コレステロールを下げ、動脈硬化、成人病、脳の老化、癌などを遠ざけ、さらにはお肌にも良い。
 

 食べ方は、冬場は体を温める鍋料理やみそ汁、少し暖かくなってくれば冷たいくしておろしショウガと醤油をかけて楽しむのが一般的。複雑な料理法はあまりないが、硬めの木綿豆腐の表面に片栗粉をまぶして揚げたものをさらに出汁と頂く揚げ出し豆腐や、ハンバーグの肉の代わりに木綿豆腐を使ったような飛竜頭はなんとも親しみのある料理で、食欲もそそる。イタリアの家庭なら必ず何かしらのチーズがおいてあるように、日本の家庭で冷蔵庫を開ければたいていは薄いプラスチック容器の中で水に浸かった白い豆腐を見つける。
 以前は日本中どんな小さな町にも一軒は豆腐屋があって、明け方から窯に猛烈な火をくべて呉汁を煮、水桶の中の凍てつく水に手を沈め指先を真っ赤に染めながら豆腐をゆったりと二つに、四つに切り離していた。

午前7時15分、バレーボール部の朝練習に向かう中学生の私が毎朝うなだれて町の商店街を通りかかる。50本サーブは、もともと怠け者の私には学校生活の始まりとして心の弾むものではなかった。と、その朝もモーターの音がしたかと思うと豆腐屋の排気口から「呉汁」を煮た大量の蒸気が一気に頭上に吹き降りてきた。熱い湯気と一緒に吹き下ろされる大豆の甘い匂いはちょっと心をくすぐり元気がでた。『美食』おいう言葉とはまだまだ無縁だった私にとって食がもたらす喜びを認識した原体験の一つ、それは誰も知らない、私と豆腐屋から吹き降りる湯気だけの秘密の日課だった。

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