"Sesamo 150": rigatoni con pesto di sesamo e gamberi passati al mortaio, la ricetta dello chef Yoshitaka Miyamoto

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 張りつめた空気がこもる会場で、審査員たちの視線は料理人が握るすりこ木棒に釘付けになった。日本から運んできた大ぶりのすり鉢で一心に白ごまを摺る。ひたすら摺る。世界中から集まった一流のイタリアン・シェフと呼ばれる料理人たちがそれまで披露してきたフライパンや包丁を持つ手とはどこか違う。シンプルでいながら安定した宮本シェフの手さばきにイタリア料理界のエキスパートたちは小さな戸惑いすら見せる。イギリスから参加した審査員オッリー・ロイドが吾を忘れて席を立ちキッチン脇で動画を撮り始めた。
          

競技会である以上に学びの場
   

 今年で5回目を迎えるバリラ・パスタ・ワールド・チャンピオンシップは69日から11日日パルマのアカデミア・バリラで開かれた。イタリアの食産業を代表する企業が開催するこの国際コンクールには、テレビのクッキングショーでイメージする審査員の威圧的なコメントや料理人の誇張された泣き笑いはなかった。腕を競うために集まった料理人たち。厳しい質問はしても誠実で時にプロとしての好奇心も隠し切れない審査員。互いのやり取りが腕を競う場である前に、会場をを高度な学びの場にしていた。
 

 グレート・シェフのチャンピオンを決める最終日、惜しくも優勝こそ逃したものの、決勝進出者4人の中で最も強いインパクトを与えたのは、日本から参加したシェフ宮本義隆の鯔背(いなせ)な仕事ぶりだった。彼が用意したの胡麻(イタリア語でセサモSesamo)ペーストとエビそぼろのリガトーニ、その名も『Sesamo150 』。
 

 審査員や数百人の観衆の視線。カメラマンたちがひっきりなしに切るシャッターの音。司会のテッサ・ジェリズィオがスポーティーに連打する質問。決して自分の料理に集中できる環境ではない。それでもテッサに流暢なイタリア語で冗談も交えて淡々と答えながらパスタを茹でるタイミングを逆算して手際よく仕事を進めていく。

 大きく腕組みをしてすり鉢を見据え考え込む審査員長のシェフダヴィデ・オルダーニに「このすり鉢は今回の為に買ってきたから新品。貴方において行こう!」と、茶目っ気たっぷりに言う。会場の緊張を破る心配りさえみせる。が、その間も宮本さんはピンと張った背筋を崩さず、手先と目線だけはやっぱりキッチンの上を這わせる。茹でて殻をむいたエビはそぼろに、ボンゴレからダシをとり、白ごまを摺り、ほんの少しのゆとりで仕上げるタイミングで、たっぷり沸いたお湯へリガトーニをさらりと落とした。 

パスタ料理の落とし穴

 パスタは茹で加減のわずかな違いでそれまで積み上げた仕事の出来を狂わせる。決勝に残った4人に与えられた時間は予選の時より10分短い30分。それでもさらなる完成度が要求される。旬の素材の組み合わせ、パスタの種類と量、手順、必要があればそれらを多少変えてでも自分の料理の世界を完璧に表現しなければならない。さらにここ数年、創造性やオリジナリティーの他に、健康への大きな配慮が要求されるようになった。単に高級な素材を上手く用いるだけでは人は喜ばないと、この点も審査要素に含まれた。
 

 グレート・シェフ部門の予選に参加した16人中、アメリカから参加の女性シェフメリッサ・ケリーは自分で肥育した豚のソーセージを詰めたリガトーニを。中国人のジャッキー・シュウは中華鍋の火力を使い、辛めに煮つけたトマトと蟹ソースのフェットゥッチーネで勝負した。オーストラリアから参加のイタリア人シェフジョヴァンニ・ピールは手製のふくよかなボッタルガを持ち込んだ。カンネローニにリコッタを詰め、季節野菜のソラマメで鮮やかな緑を添えたスペインのマーク・べリアも決勝に残った一人。だが、お皿の造形的な美しさを褒められたものの、トリュフが季節感を壊したと厳しく指摘された。
 

料理人宮本義隆のパスタで結んだもの
 

 宮本義隆シェフは、イタリア・トレント県のモエナを中心にマントバやピエモンテで7年間料理を学んだ。東京で兄と開いたレストラン『イカロ』は2011年から6年連続でミシュランの星を持つイタリア地方料理のお店だ。純粋にイタリア伝統の優れたパスタで参加することもできた。だが、今回は敢えてこのゴマを使った新しい一品で挑むことにした。

 今年が日本とイタリアの国交150周年という理由もある。が、日本人の彼が料理を学んだイタリアで初めて参加する晴れ舞台に、どちらの国でもよく使われるこの素材を用いて料理人宮本義隆のパスタで二つの国を結びたかった。
 

 温かいゴマペーストに忍ばせたバジルがアロマを絶妙に放つ、エビそぼろのこれまでにない食感、パスタとそぼろのバランス、無造作に見えて実はその盛りつけ方には超一流のシェフの手の跡が見られると審査員を唸らせた。

 技術審査員の一人でシェフのダニエレ・カルダルーロはいう。「宮本のパスタは口に入れた瞬間にはっとするものがあった。素晴らしい料理はどれも一口目にはっとさせられ次に『旨い』という喜びが沸くものだ。彼の『Sesamo150は正にそうだった。」
 

 優勝したのは、ヤギのチーズとズッキーニそれに全粒粉のフジッリで母国の雪山を表現したスロベニアのユーレ・トミックシェフだった。受賞の理由は公表されていない。見た目とは裏腹にズッキーニというイタリア人に親しみのある野菜や全粒粉のパスタを用いた素直な味わいが評価されたのかもしれない。

 宮本シェフは優勝者の発表を聞いても表情はとても落ち着いていた。そして日本人らしい穏やかな笑みでトミック・シェフに賛辞を贈った。『Sesamo150 』は日本とイタリアを独特の方法で引き結んだことを彼は確信していたから。審査員席のパオロ・バリラや評論家のアンドレア・グリニャッフィーニが胡麻ソースの最後の一滴までパスタに絡めとって口に入れる姿を見れば他にどんな説明もいらないではないか!